読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

胃カメラの上手な受け方

医療

今日は昼間のオンコール。病院で論文でも書こうかと思って、待機していたところ、すぐにコンサルトあり、たて続けに緊急内視鏡を2件施行した。終わってからもだらだらしていたが、逃げ切れるかと思った16時過ぎにコンサルトを受け、結局それから2件緊急内視鏡をした。すべて終わって病院を出たのは20時過ぎだった。

 

内視鏡にもいろんな種類がある。上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)、下部消化管内視鏡(いわゆる大腸カメラ)などは一般的だが、側視鏡、超音波内視鏡、バルーン内視鏡など特殊な用途のものもある。

 

今日は胃カメラと大腸カメラについて私見を書きたいと思う。

まず胃カメラGIFやEGDなどと略される。口から入れて、一般的には咽喉頭、食道、胃、十二指腸の一部まで観察する。初期研修医の時に胃カメラに触れ、面白いと思い、消化器内科の道を選んだ。しかし、正直、1年もやれば挿入に関してはあまり医師間で差はなく、難しい胃というのも少ない(最初は瀑状胃につまづくけど)。特に鎮静しての内視鏡がこれだけ普及すると、ますます差は無くなりつつある。むしろ差が出るのは観察の部分。

 

それとは対照的に大腸カメラ(CF、CSなどと略す。肛門から直腸~S状結腸~下行結腸~横行結腸~上行結腸~盲腸~回腸末端まで見る)は医師の腕の差がはっきりいってあるし、難しい腸(腸がごっつ長い、屈曲が強い、手術で癒着しているなどなど)もある。

センスの有無もあるし、上達には数をこなし、いろんな状況に対応する引き出しを増やす必要がある(数をこなしたからと言って必ずしも上手くはなるとは限らないが)。いきなり全大腸観察ができるものもいれば、なかなかできるようにならないものもいる。

 

大腸カメラが難しい理由に、腸の走行は十人十色であり、単純に押すだけでは入らないということが挙げられる。引いて腸を短縮するのが重要であるが、なぜ奥に入れるのに押したらダメで引くのかということの理解が難しい(細いスコープを使って、腸にループを作り、押していく流派もあるが)。受けている人は、基本的に起きているので、指導する側もあーせえ、こーせえとも言いづらい(受けている方としても、検査医が色々注意されてると不安に感じますよね)。

 

後期研修医になって大腸カメラを始める前に、上級医に挿入について聞いてみた。

上級医1「なんではいっとるのかよくわからん。」

上級医2「それを教えることができれば、僕は達人なんやろうな。」

私「はあ、そうですか(どうしようかな)。」

横で見ていたが、正直何をやっているかよくわからなかった(それは今でもそうで、下の先生がやっているのを見ていても、正直何をやっているのかよくわからない)。それでも1年くらいは見学し続けた。

僕自身、下の先生に聞かれた時に、とにかく下行結腸までは右へ右へと進めろ、押す時や左に進めている時は借金をしていると思い、借金は早く返すようにしろ、しかし右に進めるためにあえて左回転をする時がある、その時も腸がたわまないようにしろと、言っててこれって伝わってんのかな?と思う説明をしている。

 

大腸カメラの挿入が難しいのを示す証拠に、大腸カメラ挿入法の本は多数出版されている。僕も10冊以上読み、試行錯誤を重ねた。後期研修医の時に、4例目で全大腸観察ができ、上級医にあほみたいにうまいなと、褒めているのか、けなされているのかよくわからない言葉をもらった。しかし、最近の若い医師は胃カメラとほぼ同時に始めたにも関わらず、いきなり全大腸観察ができてしまうものもちょいちょいいる(僕は大腸カメラ前に胃カメラは1年以上行っており、内視鏡操作自体には慣れていた)。

 

数年前、僕に大腸カメラをしてほしいという患者さんが外来にやってきた。おおっ、僕の名前もとうとう院外に轟いたかと嬉しくなり、ええ、喜んでさせていただきますよ~とオーダーしたが、後日院内のナースに、「先生、OOさん来た? 友達なんだけど、先生に内視鏡やってもらうように言ったのよ。」と言われ、謎は解けた。もちろん、院外には全く轟いておらず、自惚れていた自分が恥ずかしかった。

 

他科の医師に内視鏡で遊んでいると揶揄されることもある。事実、ゲームセンターで体感ゲームの達人をみて、この人たちが内視鏡をやれば、達人になれるのではないかと密かに思っている。

 

大腸カメラは簡単な腸で標準的な医師が行えば、さほど苦痛なく行える。受ける方は身をゆだねるしかなく、受けるコツも特にない。しかし、胃カメラは違う。胃カメラに関しては、楽に行えるかどうかは受ける方の要因が大きい。

 

一番重要なことは如何に食道にカメラが入る時に体の力を抜くか。これに尽きる。

 

普通はカメラのような太いものが喉に入ってくると、身構えてしまい力が入ってしまう。しかし、力が入ると食道の入り口にも力が入ってしまい、カメラが通らなくなる。

 

ドアを開けようと押すが、開けさせまいとして押し返している状況と同じで、何とか開けることができても勢いがついてしまい、受けている側はしんどいし、カメラをしている側はひやっとする(なれてくれば、力が抜けた瞬間にカメラを蛇のようにくねらせて入れることができるけど)。

 

鎮静剤でぼーっとした状態でカメラを受けると楽なのは、もちろん意識が低下していることもある(健忘作用もあるので、おえおえ言ってても終わった後に忘れていることもある)けど、喉の力が自然に抜けるということも大きい。

 

僕自身、数年前に人間ドックで初めて胃カメラを受けた時、喉の力を抜いて検査を受けたところ、終わった後、「上手ですね、本当に初めて受けたんですか?」と褒められた。やる方は何千例とやっているが、受けるのは初めてであったのでそうですと答えた。しんどいのはしんどかったが、耐えられないほどではなかった(びびって細い経鼻内視鏡にしたけど)。

 

咽喉にカメラが来た時、力まずに力を抜いてみてください。そうすれば、胃カメラはぐっと楽になります。少し押されたときに軽く飲み込む動作をすればさらによいです。鎮静剤を使って受けるのが一番楽だと思いますが(お酒をよく飲む人は抑制がとれて暴れることがあるので要注意ですが。大暴れしても本人自体は全く覚えていません)。

 

大腸カメラが痛い場合は、医師がへたくそであるか、あなたの腸が難しい腸なのかのどちらかです。医師によって痛かったり、痛くなかったりすれば前者ですし、毎回痛ければおそらく後者です。