生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

三次救急病院で働くということ

一昨日の昼のオンコールはまあまあ忙しく、緊急内視鏡を4人にし、入院も何人かさせたが、この3日間で15人ほど入院していた。そのうち2人の担当医になった。

 

1人は90超のおばあちゃんで、血便が出ていたが、前医が対応できないとのことで送ってきた。たまたま一昨日に送られてきたため、僕が対応したが、高齢であり、持病もあるため、他院で大腸内視鏡はできないと言われており、検査の希望もなかった。

DNAR(心肺蘇生はしない)を以前から本人は希望しており、ERですでに輸血は始められていたが、結局、輸血すら希望しないとのことであった。

 

僕が勤務している病院は、三次救急を標榜している公的病院であり、他院からの転送依頼は三次救急扱い(どんなにしょぼくても)として断れないことになっている。もちろん転送例は三次対応が必要な症例が多く、それは我々が対応しないといけない。しかし、投げっぱなしジャーマンのような転送依頼も時々あり、そういうのも断れない。

 

三次救急病院は最後の砦であり、その自負で受けているが、いくら三次救急病院とはいえ、夜間や休日は基本的に消化器内科医は一人で対応する(若手はERCPの時に上級医を呼ぶことになっているし、胃静脈瘤破裂など一人で対応できないものも応援を呼ぶことになっている)。若手の当直回数が多いが、一通り緊急内視鏡の対応ができるようになった今でも不安に感じることがあるのに、若手だとなおさらだろう。

 

それゆえ、ヘルプで呼ばれた時は、よっぽどのことがないといつでも行くようにしている(馬力のある後輩スタッフが来てくれたので、最近ヘルプの回数はぐっと減った)。夜中呼ばれた時は、空いている道を少々飛ばしながら、テンションを上げていく(出血なら止めてやる、胆管炎ならドレナージチューブを入れてやると念じながら)。

 

上述したおばあちゃんも家人とよく話せば、三次救急対応は必要ない。このような状況で体に負担のかかる検査や処置は不要で、むしろ不幸な結果につながる。幸い寝かせているだけで血便は減少し、部長命令ですぐに転院先を探し出していた。

 

本日はバルーン内視鏡のERCPを行った。この処置だけは、うまくいった後に「勝った」という気がする。何に勝ったのかよくわからないけど。

 

亜全胃温存膵頭十二指腸切除術という膵臓癌や胆管癌に行われる手術後の胆管と腸の吻合部の写真。泥のようなものがついているあたりに吻合部があるが、狭窄していてよくわからない。

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胆管内にカテーテルを入れ、ガイドワイヤーを挿入し、それに沿わせてバルーンカテーテルをいれ、狭いところを広げる。そのバルーンカテーテルの先端についたバルーンを膨らませているところ。8mmまで拡張。

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バルーンをしぼませた途端に胆管結石が大量に出てきた。造影ではこんなにたくさんあると思わなかったので、検査室はおおっとどよめいた(動画をアップしたいくらい)。

 

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その後胆管吻合部は良好に拡張し、結石も掃除して出てこなくなった。1時間ほどで終了。こんな石が身体にできるとは人体は不思議だ。医師になって知識は深まったが、それでも体のことはわからないことだらけだ。

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やる前は、うまくいくかなという不安と、絶対うまくいかせてやるという意気込みで変に張り詰めたテンションだが、うまくいきだすとそのテンションがふっと緩む。その瞬間は結構好きだ。うまくいかない時は、無力感と敗北感で何とも言えない気持ちになる。その瞬間は大嫌い。

 

今日はここまで。