生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

部長の呼び出し②

前置きが長くなったが、最近部長に呼び出された。他の皆も色々呼び出されているが、正直いい話であったことは一度もない(笑。はっきりものを言い、逆らう医師は怒鳴られている(最近易怒性が増している。ここにいたかったら僕に逆らうなと言われた先生もいるらしい)。

僕などは面従腹背で表向きは、はいはい言っているので、怒鳴られたことはない。しかしより真摯で貴重なのは、僕のような人間よりも直言居士なのだが、それはわかっておられない様子だ。

イエスマンばかりだと心地よいかもしれないが、発展につながるとは思えない。アウフヘーベンしないと。僕がアンチテーゼにならないのは、めんどくさいのと気が小さいからだ。

もともと人の話をあまり聞かない先生で、ゴーイングマイウェイを極めている。正直、僕自身には何の興味もないが、学会発表も多いし論文も書く(全部自分がしたいからしているだけで、部長や病院のためでは決してないが)し、文句言わないので、便利な存在とは思われていると思う。

 

上のようなことを考えつつ、碌な話じゃないんだろうなと思い、ブルーな気持ちで部長が私物化している部屋に向かった。

結論から言うと、超音波内視鏡(EUS)をやれということだった。先生はなんでもできるし、やる気もあるし、学会発表も多くするし、論文もよく書いてるしとまずおだてから入った後に、しかし、もう一本軸を持ってほしいと。それがEUSらしい。しかも胆膵の。

最近膵癌の早期発見に取り組んでいる病院に刺激を受けて、うちもこの地域の膵癌を集めて早期診断すると息巻いている。そのためにEUSを増やすし、新しいEUSも買うと(そのため僕が以前から買ってくれと言っていた新しいショートタイプのダブルバルーン内視鏡は後回しにされた)。以前も同じような話をされた。

今は胆膵グループの二人がEUSを行っているが、これからもっと増えていくので、僕にリーダーシップを取ってもらい、バンバン件数を来なし、学会発表もしてほしいと。

部長曰く、肝臓グループの二人にはさせられないし、消化管グループのA先生は、あいつはやる気がないし、ダメなのはわかるだろう(それは正直わかる)、B先生(女医さん)にいうと、また私に仕事しろと言うんですかと怒るし、C先生(女医さん)は体調のこともあるし、となると先生しかいないんだよと。

 

僕は前に言われた時もこう言った。

先生、僕はやる気がないわけではないのです。大きな膵のう胞や消化管の粘膜下腫瘍のEUSはやってますけど、正直膵癌の微小病変を見つけるような詳細なEUSはできません。

今回もそう言った。できないと言うことは恥ずかしいが、それでもできないものはしょうがない。

僕が専攻医をした病院にはEUSがなく、触ったのはここの病院に移ってきてからだった。EUSも覚えねばという気持ちがあり、自分の患者(でかい膵のう胞がある人や膵癌の人)を検査に入れ、本を見ながら幾度かやったが、どうしても本の通りに上手くいかない。ここでこうすればこれが見えると書いてある通りにやっているが、それが見えてこない。四苦八苦して胆管を描出して感動しているレベルだ。

そういったら、そんなもんはちょっと練習すれば出来るようになるよ、なんだったら他所の病院に修行に行ってもいいよとまで言い出した。

どうせ修行に行くのなら、術後胃のERCPや大腸ESDの先進施設に行きたいなと思っていたら、週末使って2日ほどなら行ってきていいよ、それでマスターできるからと言われた時にはずっこけそうになった。

週末はよその病院もやってないでしょうし、2日行ってできるようになるんなら、うちの胆膵グループにもんでもらうわ(笑。そんな甘いもんじゃないでしょう。

とりあえず、若手にやらせといて、困ったら先生が出ていけばいいからとも言われたが、困った時にでていける腕がないから、僕も困っているわけで。

 

いつも学会の抄録を見て、どこの病院が何件と数えて(抄録集にあれだけ書き込みしている人もそういないだろう。肝心の抄録は読んでいないだろうけど)、うちの方が多いと悦に浸っているが、部長の考え方は徹底して質より量だ(部長になるとどこの病院も大なり小なりそうみたいだが)。

数至上主義が高じて、6月の学会に今年4月に赴任予定の専攻医や若手の分の抄録も出させている(去年は卒業する専攻医に書かせたが、一人書かなかったので、今回は目を付けられたスタッフが書いている。僕は今いる専攻医に出させて回避した)。

しかし、膵癌の微小病変を見つけるのに、数を増やすために実力のない医師にさせて質を落としたらダメだろうと思う。だったら、実力を上げろと言われるのは目に見えているので言わなかったが。

困ったなあ。

今7:55。後1時間ちょいで解放される。このまま呼ばれませんように。