生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

アルコールが個性? 

今週も引き続き忙しい。

火曜日は大腸ESD。まず全大腸観察できておらず(腸がredundantなためTCSできず、次回は太めのスコープでと書いてあったが、その時に変更してトライしてほしかった。僕ならそうしている。上級医なんで言えないが)、全大腸挿入を試みて何とか10分で盲腸へ。

前回観察しえた範囲にポリープがたくさんあったことから推測できるが、観察できてない部位にもたくさんポリープがあり、ESDが必要なものもあったが、もともとたくさんポリープを取る必要があり、一部のみ切除し次回に回すことにした。それでも6個EMRしてから、S状結腸のLSTに対しESDを行った。

spasticな腸であり、EMRは難渋したが、ESDはうまくポケットを作ることができ40分ほどで切除できた(1時間切りたいな~といったら、主任に「そんなに早くできるの?」と言われた)。

ヘパリナイゼーションが必要な人だったが、案の定本日出血したため、緊急内視鏡を行った。ESD後潰瘍は大丈夫だったが、EMR部から出血が疑われたため、クリップを追加した。

しかしヘパリンはよう血がでるわ。ワーファリン飲ませたままの方が血でえへん気がする(実際EMRをそれでやったことはある。出血しなかった)。ワーファリンはINR延びるの時間かかるから、ヘパリンも長期間になるし。DOACが出た時は効果の指標がないのはどうなんやろと思ってたけど、今はほとんどヘパリンがいらないDOACのほうがいいなと思う。

昨日は、DBERCPの手伝い。かなり難渋し4時間以上かかったが、なんとか胆管結石を取りきった。検査が終わったら9時近かった。

 

こんな記事を見た。

www.msn.com

 

アルコール規制は利権利権で現実的に難しいと思う。個人的には無くなっても全く困らないし、アルコール肝硬変の患者で結構しんどい思いをしてきているので、賛成か反対かと言われれば、賛成寄りの意見ではあるが。

 

この記事の中に、看過できない部位があったので抜粋する。

「さすがにそれは気持ち悪い。お酒を飲む、あるいはどの種類のお酒を好むか、さらにはその酔いっぷり……は、現時点では人の個性を形成する大きな要素となっているため、そこだけは死守したい……ところではあるけれど、もしかすれば30年後はそういう“個性”自体が、あまり意味を成さない世界となっている可能性も充分にあり得るので、抗うこと自体無駄なのかもしれない。」

 

正直、この文章の意味がよく分からないが、アルコールが人の個性を形成する大きな要素というのはまったく賛同できない。

適量を楽しく飲んで、健康に問題ない程度で済ませられれば何の問題もない。しかし、限度を超えて飲む者は一定数いる。もちろん消化器内科医という仕事がら、そういう人に多く接しているのは間違いないが、そういう人を「ああ、個性だからしょうがないねえ」とは思わない。すくなくとも尊重すべき個性とは断じて違う。

 

C型肝硬変やB型肝硬変とちがって、アルコール性肝硬変は原因が100%自分にある。自己責任で済ませられるのなら、好きなだけ飲めばいい。しかし、限度を越えて飲むと周りに迷惑が掛かるし(あるアルコール依存の患者の奥さんが外来に来て、強制的に入院させてくれと哀願されたことがある)、急性アルコール中毒、アルコール性肝硬変による食道静脈瘤からの吐血、アルコール性膵炎などで病院に搬送される人は珍しくない。

太く短く生きる、俺は好きなだけ飲む、病院の世話にはならんと覚悟を決めて飲むのならいい。それも本人の生き方だ。しかし、アルコールを大量に飲んで、いざ体が悪くなったら病院にすがる人は多い。

 

飲み続けているのに、定期的に受診して、悪くなっているのを見ているだけの人もいる。お腹刺して病院に来てるのと一緒でいくら病院に来てもよくはならない、治療は禁酒だけと言ってもピンと来ていない人が多い。実際経験しないとわからないことは多いが、こればっかりは後戻りできないため、そうなる前に止めないととこちらも口を酸っぱくしていう。

断酒会を勧めても、本人の意思がないと参加できないため、参加しない人が多い。精神科に紹介しても、精神科への偏見からドロップアウトしてしまう人も多い。

 

日本には応召義務があるため、患者を拒否することができない。いい制度だと思うが、アルコールを止めない人を前にして、複雑な心境になることがある。

アルコールは少量なら問題ないが、ベクトルとしては薬物や毒と同じだ。多量に飲めば死ぬし、癌もできる。20代でアルコール性肝硬変で死んだ人を見たことがあるし、入学したての学生が、急性アルコール中毒で亡くなったというニュースを見ない年はない。

どうしたら適量で抑えてもらえるのだろうかという葛藤は消化器内科を続ける限り、つきまとうのだろう。消化器を選んだことは後悔していないし、また研修医に戻って科を選びなおすとしても消化器内科を選ぶだろうが、この葛藤とは縁を切りたい。

 

今日の体重は76.7㎏。減量を始めてもうすぐ1年になるが、また間食がちょこちょこ増えてきた。ぼちぼちもう少しきつめに減量に入ろうかと思っている。