生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

絶対的→相対的

昨日は早期胃癌研究会で東京へ。前回来たのはラングリッツを買った時だから2年ぶりだ。

mfuku4585.hatenablog.com

 

昨年まで一緒に働いていた後輩が症例提示をしていた。優秀で陽キャで学会発表を何回か指導したが、僕より堂々と発表し、いつもマイクを手にもって発表していた(笑。学生時代はよくイベントをしていたらしい。今回はさすがにマイクは持っていなかったが、やはり堂々としていた。

終わった後に少し話したが、東京に出てきて後悔していると言っていた。なんで?と聞くと、楽しいことが多すぎてとのことであった(笑。今はESDを主にやっているが、メリハリが効いていて、当院のような3次救急のなんでも病院にはもう戻る気はないとのことであった(笑。

僕も途中で抜け出して、研修医の時の同期と食事へ。亀戸の鉄板焼きの店に行った。リーズナブルな値段で、肉、もんじゃ、お好み焼き、焼きそばなどのコースを食べることができた。とても美味しかった。

 

輸血ができない宗教についてのノンフィクションを最近読んだ。かなり前の話だが、事故にあい輸血が必要な子供にたいし、信者である親が輸血に同意しなかったため、結局亡くなってしまった。 

僕は輸血療法委員会というのに入れられていて入っていて、2か月に1回始業時間前の30分会議がある。以前は処置日の夕方に行われており、ほとんど出ることができなかった。たまに出ても、資料の棒読みがだらだら1時間以上続き、建設的な議論はほとんどなく、本当に無駄な時間だった。

ある時、あまりに出席率が悪いため注意された。こちらからすれば、遊んでいるわけではなく内視鏡治療真っ最中であり、検査を中断して非建設的な会議に出るのは正直ばかばかしくてその価値はないと考えていた。他の者も皆忙しくて代わりを頼めないし、くだらなさ過ぎて頼む気もしなかった。

我々の輸血は血液内科などと違って単純で、出た分を入れることがほとんどだ。自己血も使用しない。はっきりいって消化器内科が検査や手技を犠牲にしてまで、このくそみたいな委員会に必要とは思えず、委員会のトップは怖くて有名な先生だったが、よっぽど我々を外してくれと言いそうになった。

しかし、トップが変わって朝の30分に限定して委員会を行うことになった。必然、資料の棒読みはなくなり、以前よりは建設的になった。朝は比較的早く行っているので、その方がありがたかった。朝になってからは毎回参加している。

 

火曜日はその輸血療法委員会があった。以前当院は上述した宗教に対して絶対的無輸血(患者の意志を尊重し、どんなことがあっても輸血はしない)の立場だった。輸血をしないことでどんな不利益があっても病院は責任を持たないという免責書を取って、治療にあたっていた。

僕自身も何人かこの宗教の信者の治療を行った。ESDもしたし、術後胃のERCPもしたし、小腸内視鏡、大腸ポリープEMRも行った。幸い、輸血が必要になるような状況には至らなかった。

この宗教の信者はいい人が多い。一人だけドクターショッピングを繰り返すどうしようもない人がいたが、他の人は皆にこやかで穏やかだった。治療がうまくいって感謝の手紙をもらったりもした。

この宗教内で絶対的無輸血の立場をとる病院のリストがあるらしく、かつて当院はそれに載っていたようで、そのため結構集まってきていた。

 

しかし、当院も相対的無輸血(患者の意思を尊重しできるだけ輸血はしないように努力するが、輸血以外に救命できない場合は輸血をするという立場)に方針を変え、マニュアルを作成している。

絶対的無輸血では民事で訴えられることはないが、刑事罰に問われる可能性があるし、また輸血をすれば救命できる患者が何もできずに死に至るのを傍観しかできないのは医師としては屈辱的で敗北だ。

 

マニュアルの案には、輸血が必要な治療を行う場合、輸血同意書にサインをしない場合は転院を勧告すると書いてあるが、輸血を必要としない治療は「原則として」行うとも記載してあった。

‥結果的に輸血をせずに済むことは多いが、輸血の潜在的な可能性が皆無な手技は我々消化器内科でもほぼない。外来ならともかく、入院で手技を行う場合、結局はその宗教の信者と分かった段階で断らざるを得ないということになる。

「原則として」というのが曲者で、こういう医師の自由裁量に入り込む余地がある書き方は病院の責任逃れと取れないこともない。

 

特に問題なのは救急だ。輸血が必要と判断される患者の搬送の際、前情報でこの宗教信者と判明した時は他院への搬送を促すが、来てから判明した場合は絶対的無輸血で対応せざるを得ない。これでは以前と変わらないが、ではどうすればよいかという答えはそう簡単に出ない。

そういう事態にはならないだろうと楽観しつつ、どこかで脅えながら、いざ発生してしまったら現場は上述したノンフィクションのように対応するしかないのだろう。

個人的には、上記信者が前情報なく搬送されてきて、吐下血でショックバイタルとなっていたり、著明な貧血があり、その段階で信者と判明し輸血を拒否した場合、輸血の説得の努力は最大限行うが(上記ノンフィクションを読む限り無理だろうが)、傍観はせずに輸液を全開もしくはポンピングで入れてもらい(人によってはアルブミンOKの人もいるのでその場合はアルブミンも)、免責書にサインをもらったうえで内視鏡はトライすると思う。出血さえ止められれば救命の可能性は出てくる。

実際、3次救急に出張して輸血より内視鏡を先行させることは珍しくなかった。勿論、科や疾患によって事情は異なるが。

本当に難しい問題だ。1+1=2のようにクリアな答えが出る問題ではない。

 

今日の体重は75.5㎏。昨日に加え、今日は品プリの朝ごはんが美味しくて食べ過ぎた。久々に会った後輩たちは痩せたと言ってくれているので、まだ大丈夫だろうが、慢心だけはしないように気を付けよう。