生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

内視鏡後死亡のニュースで自分の経験を思い出した

今日は息子と一緒に私立中学の説明会へ行った。学校説明会なんで、基本的にいいことしか言わないが、息子は相変わらず聞いているのかいないのかという反応だった。

帰りのトイレで、小便をしていた警備員が、僕が後ろを通った瞬間に放屁したのは非常に不愉快だった(外で待っていた息子にも聞こえるくらいの音だった)。自分は排便の際でもできるだけ音を消す努力をしているゆえ、このデリカシーのなさにイライラっとした。息子を受けさせないでおこうかとも思った。そもそも学力的に足りていないけど。

 

こんなニュースを見た。

内視鏡手術後の死亡、3800万円賠償へ」

以下抜粋。

「患者は2018年3月27日に胆管の石を取り除く内視鏡手術を受けた。同29日夜に不調を訴えたが経過観察に。翌30日朝に容体が急変し、検査で十二指腸に穴が開いていることが判明した。転院先で手術を受けたが、4月27日に死亡した。

 市立病院側は、手術時の直接ミスではないが、電気メスで熱を加えたため、術後に弱い部分が開口した可能性があると結論付けた。管理が万全ではなかったと認め、「死亡と何らかの因果関係を認めざるを得ない」と判断。5月末に市が3805万円を支払うことで示談が成立した。」

これはERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)という手技で、大学病院に来てほとんどしなくなったが、前病院では結構やっていた(ここ何年かは術後胃が多かったけど)。普通の内視鏡は前にカメラが付いているが、ERCPでは側視鏡という斜め横にカメラが付いた内視鏡を用いて処置を行う。

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Bile ductというのが胆管で、上記例ではここにできた石を取る処置をしたと思われる。記事を読む限りでは石を取るために胆管の出口を電気メスで切開するESTという処置をしたと思われ、そこが後日穿孔したと考えられる。

‥普通はEST後穿孔といえば後腹膜穿孔で、いわゆるおなかの中に空気がばんばんにもれることは珍しく、よっぽどの大穴でなければカテーテルを留置することで治ってしまうこともある。僕自身もあとで考えるとそうだったのかな?という経験がある。もちろん緊急手術になった症例もみたことがある。

EST後遅発性穿孔なら医療ミスではなく偶発症なので、それで示談をするというのは疑問が残る。一日経過観察したことと、後日亡くなったことで示談としたのだろうか。記事からは読み取れないが、何か都合が悪いことがあったのかもしれないが、これ以上は触れない。

 

僕もERCPで一度穿孔をさせたことがある。術後胃の症例で、polysurgery(何回も手術を受けている)であり難渋が予想されるためということで紹介されてきた患者だった。

胆管まで到達できない可能性、穿孔をおこす可能性について重々説明したうえで、バルーン内視鏡を用いてERCPを行った。

癒着の強い症例では、スコープにとんでもない力がかかり、これ大丈夫か?と思うことがあるが、この症例では正直スムーズに内視鏡挿入でき、そこまで苦労せず胆管の入口に到達した。

さて胆管を選ぶかと思い、準備していたらスコープがずるっと抜けて、十二指腸水平部まで戻った。そこに裂創ができていた。

え、なにこれ?と思って、造影したところ、後腹膜が造影された。一瞬何が起こったかわからなかったが、後腹膜穿孔だとすぐに我に返り、クリップで閉創を試みた。しかし、創部はどんどん広がっていくため、内視鏡治療の限界と判断し、スコープを抜去後すぐにCTを撮って外科にコンサルトした。

その日のうちに緊急手術となった。緊急手術は無事に終了し、外科の先生はついでに胆管結石も採石してくれた。事前に十分説明しており、幸い経過も良好であったため、特にトラブルこともなかった。もちろん毎日顔を出して、頻回に偶発症をおこしてしまったことを謝罪した。

 

内科の中でも消化器内科は様々な手技を行っており、上記のような手技に関する訴訟リスクは内科の中でも高い方と思われる。上記ニュースを見て、怖いことをしているのだなと改めて思わされた。

 

今日の体重は77.2㎏。昨日の夜は長女とラーメンを食べに行き、今日の昼は息子と中華を食べに行き、食べ過ぎた。