生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

検査が少ないので、根深い固定観念と先日の大腸ESDについて考えてみた

MSNの記事で、新型コロナで自粛を言われているのに、なぜ通勤する人が減らないのかという記事があり、その理由の一つに「仕事とは電車で通勤して会社でするもの」という感覚が日本人に根深く残っているからとあったが、これはその通りだと思う。僕のイメージするステレオタイプは、これにスーツを着て仕事をするというのが加わる。マスオさんが近い。

自分は会社に行ってないし、昨年は電車通勤したが、ほとんどは自転車、バイク、車通勤だし、スーツも年に数回しか着ないけど、それでもこういう固定観念を持っている。

今でも学会などで平日に外に出て、昼間から街をぶらついている壮年の人をみると、平日休みの人もいるのがわかっているにもかかわらず、この人は何をしているのだろう?と思ってしまうし、外勤をするようになって平日の夕方に家に帰ることができて、子供らとスーパーに行った時、この人は仕事をしていないのだろうか?と思われないかと少し危惧してしまう。僕の偏った固定観念は根深く食い込んでいて、なかなか解放されない。

 

29日の日当直は、入院中の人がCVDを起こして意識状態が悪くなったりもしたが、それ以外は比較的落ち着いていた。救急を受けるようにとは言われているが、いわゆる救急病院ではなく、検査もごくごく限られるので診ることができる疾患にも限界がある(救急隊もある程度理解していて搬送依頼をあまりしてこない)。今日は仕事だったが、救急当直と違って体が楽だ。

 

先週ESDした人は軽度のPECSを起こしたが、自然に軽快し無事退院していった。その前の週にESDした人は筋層を削りながら切除したにもかかわらず、まったく問題なかった。前者は上行結腸で後者はS状結腸だが、PECSはやはり部位の問題が大きいのだろう。僕の経験でも遠位結腸でPECSを起こしたことは記憶になく、ほとんどは近位結腸(特に上行結腸と盲腸)だ。

後者の人は6時間近くかかって切除したが、残念ながらsm massive以深で垂直断端が陽性であった。断定はできないが、筋層浸潤も疑われると病理所見に記載があったが、筋層牽引が3か所もあり、さもありなんだ。筋層へ浸潤していると早期大腸癌ではなく、進行大腸癌となる。

‥それは難しいはずだわ。僕が前病院に赴任する前の話だが、そのころはESD黎明期でESDの達人が前病院に指導がてら早期胃癌のESDをしに来たことがあった。大変難渋して、穿孔もしたらしいが、その病変が筋層より下の漿膜に浸潤していたらしい。

このように進行癌のESDは達人でも難渋するのだから、いわんや僕がをや。ちなみにこの達人の息子と前病院で一緒に働いたが、彼もESDはとても上手であり、やはり血か‥と思った。

 

大腸癌のガイドラインでは、癌の分化度(たちの悪さ)や、脈管侵襲(血管やリンパ管に顔を突っ込んでいるかどうか)や、深達度(どこまで深く潜っているか)で追加手術を検討するが、「郭清を伴う腸切除を考慮する」と曖昧な記載が多い。上記条件を満たしても必ずしも転移するわけではないので、しっかりと説明した上で患者の希望や背景で手術するかどうか決めろということだろうが、ある意味逃げにも見えなくない。

が、垂直断端陽性だけは「郭清を伴う腸切除」と言い切っている。要は癌が間違いなく下に残っとるよということなので、それはそうだ。

 

前病院で5時間強かけて切除した10㎝近い隆起型の腫瘍はm癌だったが、今回の腫瘍は30㎜ないのに下手すれば進行癌だ。今回もIsp polypで隆起型だったが、隆起型は表面構造での深部浸潤の判断が難しく、Ⅴi軽度不整程度しかなかったし、通常観察でもsm slightlyくらいかな程度の変化しかなかった。

 

GWとコロナの影響で検査が少なく、午後は丸々空いていた。試験問題を作り、やるようにいわれているしょーもない研究の下準備をしたが、それでも時間を持て余したので、ここでカタルシス(笑。