生きよ 堕ちよ

高校留年~プータロー~文系大学~再受験し医師~内視鏡に魅せられ消化器内科へ

医師を辞めたい瞬間?④

月1回の日曜日の日当直中。今のところ病棟コンサルト数件あったが、まあまあ落ち着いている。

 

ある指導医の資格をとるのに、上級医2人のサインと推薦文が必要であった。こんなことで教授を煩わせてもなと思い、准教授2人に頼むことにした。1人はいたのでサインをもらい、もう1人はいなかったのでサインをでっちあげて推薦文も適当に自分で書いた(推薦文と字体を合わせるのにちょうどよいとも思った)。

それが教授にばれ、でっちあげた方の准教授から電話がかかってきて、教授が怒ってるから謝ってこいと言われた。教授に頼まなかったのがまずかったらしい。こんなしょうもないことでと思ったのが仇となった。

「誰が書いてもいいんじゃないんですか?」と啖呵を切ることもなく、平身低頭謝っておいた(笑。

・・・しょぼっ。

 

引き続き自験例で検証する。 

  1. 死力を尽くして外来をやっても、遅いと言われる時
  2. 当直中、やっと眠れると思ってベッドインして5分で呼ばれた時
  3. 人が足りなくて36時間くらい働いている時
  4. 当直明け、やっと仕事が終わったと思って帰宅しようとしたら急変した時
  5. 当直明け、自宅のベッドで快眠しているも、くだらない看護師の電話で叩き起こされた時
  6. 気づいたらプライベートな時間を過ごさず3ヶ月経っていた時
  7. 患者の理不尽なクレームを受けた時
  8. 患者の汚物や血液に汚染された時
  9. 不慮の事故が発生して裁判になりかけた時

 

8.患者の汚物や血液に汚染された時

これを気にするようでは消化器内科医は務まらない。トップクラスに汚い科だろう(DM科の先生に汚いところを扱う下品な科だと言われたことがある)。今ではCOVID-19の影響でガウンを着るが、昔はあまり着なかったので手に患者の唾液やうOこが付くのはしょっちゅうだった。針刺し事故の経験もある(C型肝炎の人だったのでどきっとしたが、幸い感染はしなかった)。

大腸の腫瘍性閉塞にイレウスチューブを入れるが、手袋一枚くらいでは便臭が手にしみついて、とりつかれたように手を洗う羽目になる。

一番最悪だったのは、大腸内視鏡中にはねたしぶきが口に入った時で泣きそうになった。検査を放り出すわけにもいかず、そのまま終わらせた。何リットルうがいしたかわからない。それ以降絶対マスクをするようになった。この時は医師じゃなくて人間を辞めたいと思った。

 

9.不慮の事故が発生して裁判になりかけた時

幸い、裁判になったことはないが、偶発症をおこして医事課対応になったことが2回ある。この時は辛かった。逃げたくなったが、歯を食いしばって何度も患者のところに足を運んだし、話し合いも何度かした。

偶発症をおこした後輩が、実際裁判になっているのを目の当たりにしたこともあるが、自分がその立場になったら医師を辞めようと思ったかもしれない。

 

僕は今まで、理不尽なことを言ったり、してきた人を嫌いになったことやこの病院を辞めてやると思ったことはあっても医師を辞めようと思ったことは一度もない。医師しかできないことがわかっているし、何も積み重ねていないどん底の生活に戻りたくないからだ。

急性期医療、癌に対する医療は確かにきつい。何人もの人を見送ってきたし、この治療でよかったのか?と思うこともある。が、その分やりがいもある。

自分が辞めたいと思わなくても、能力、体力の問題で急性期医療、癌診療を辞めないといけないが、それでも何らかの形で医療には携わっていくだろう。